創作︰零れ落ちた涙が手のひらをすり抜ける
24歳という若さで飛び降り自殺をした女性が残したと思われる遺書が、彼女が亡くなってからちょうど2年後の平成30年6月20日に発見された。
神保町の古本屋の棚に飾られたある本に挟まっていたのを、客が偶然見つけたのだ。
以下、遺書の内容
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私は恵まれていました。
涙を流したら、声をかけてくれる人がいました。
涙を流したら、手を握ってくれる人がいました。
涙を流したら、代わりに拭いてくれる人がいました。
涙を流したら、抱きしめてくれる人がいました。
皆様の優しさに触れて、育ちました。
しかし、優しさに甘えることだけを覚えてしまい、優しさが手のひらから溢れ落ちないように努力することができませんでした。
私は本当に幸せ者でした。
そのことに気づいたときには、
溢れ落ちた涙が手のひらをすり抜けていました。
北條 晴美 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
蛇足だが、遺書が挟まっていた本の題名は『トーマス・エジソンの願い』だったという。
御冥福をお祈り致します。