星野メトメの本棚

詩とか小説とか勉強研究とかをこの本棚に置いときます。存在を知ってくれただけでも本当に嬉しいです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

創作︰素粒子の幽霊 -後編-

次に、と思う。世界もわかれば宇宙もわかる今なら、自分は月から見た地球とやらを意識したい。途方もない太陽系よりも途方ない宇宙のことはあまり興味がない。もうわかってしまっているからだ。しかし意識するかどうかは違う。思念は景色を写す。だから今か…

創作︰素粒子の幽霊 -中編-

光速を超えて宇宙の連関の中に死後生きる。何ができるだろう。何をすればいいのだろう。特に独自の死生観を持っていた訳では無い自分にとって、死後どうなろうがどうでもよかった。ただ受け入れるのみの心術を自然と持ち合わせていた。 そういえばと思い出す…

創作:素粒子の幽霊 -前編-

前中後編に分けます。大学生の時のメモを発掘しました。山田亮一の影響受けまくってますね。 「今日の空は何色かい?」 死んだギニアピックが云う。 「青色に見えるよ」 簡素に応える。そこに青があるから。 「見えるのか。君はもう人間じゃないのに」 「ま…

創作:エコロジーは初対面にあらず

今日、東京芸術大学美術館の「新しいエコロジーとアート」を観に行き、色々思うことがあったので、とりあえずその一部を自分の形で表現してみます。 ぼくは吊り橋の中間地点に立っている ぼくはこのまま進んで対岸の自然豊かな土地に行きたい しかし今ぼくは…

創作︰零れ落ちた涙が手のひらをすり抜ける

24歳という若さで飛び降り自殺をした女性が残したと思われる遺書が、彼女が亡くなってからちょうど2年後の平成30年6月20日に発見された。 神保町の古本屋の棚に飾られたある本に挟まっていたのを、客が偶然見つけたのだ。 以下、遺書の内容 ーーーーーーーー…

創作︰ドーナツの穴を食べるということ

登場人物 中学2年生の草加部 朱莉(14)くさかべあかり大学生講師の松田 文博(24)まつだふみひろ 「それじゃあ授業始めっかー」 ドーナツを囓りながら松田は先に席についている朱莉に声をかける。「またドーナツ食べてる…見つかったら教室長に怒られますよ」 …

創作︰リストカット症候群

1995年、日本の地下深くにある研究所ではとある人体実験が秘密裏に行われていた。研究主任はビットマルキスと呼ばれていた。 行われていた研究がどのようなものかというと、鬱病で死を望む人間に安らかな死を保証して協力してもらい、その人間に様々なストレ…

創作︰3人の逆説的な笑顔

二人の少女がいた。花梨と美月二人の違いは先天的な特性のみであった 花梨は内臓器系に少しの障害があった。美月は他人より少し知能指数が高かった。 花梨は何気ない日常を順風満帆に過ごしていた。しかし高校2年生のある日、内臓の弱さが彼女を病院に閉じ込…

創作︰神様のなり方

他人に比べればしょうもない挫折、他人に比べればしょうもない才能、他人に比べればしょうもない存在価値、それらに苛まれた弱い青年は、 「人類なんか滅べ!」 と叫んだ。深夜3時に酒を買いにコンビニに行った帰りのことだ。周囲には人はいなかった。 下を…