星野メトメの本棚

詩とか小説とか勉強研究とかをこの本棚に置いときます。存在を知ってくれただけでも本当に嬉しいです。

創作:エコロジーは初対面にあらず

今日、東京芸術大学美術館の「新しいエコロジーとアート」を観に行き、色々思うことがあったので、とりあえずその一部を自分の形で表現してみます。

 

 

 

ぼくは吊り橋の中間地点に立っている

ぼくはこのまま進んで対岸の自然豊かな土地に行きたい

しかし今ぼくは目の前の存在と向かい合っている
人型のステンレス鋼の塊
黒いボーラーハットを被っているために頭は丸い


そいつはぼくに話しかけてくる
「私はこの先に行きたいのですが、進んだ先に土地はありますか?」
ぼくは少し悩んでから応えた
「土地はあるけど、あなたが求めているものはないんだ…ごめん」
「私が求めているもの?君はそれを知っているのですか」
ぼくは俯いて言葉を続ける
「それは鋼のように硬く、錆びついた匂いがして、精巧に作られた木々が生い茂った、そんな土地でしょ?」


そいつは突然その硬い右手でぼくの頭を撫でてきた
ぼくはびっくりして思わず手を跳ね除けた
そいつの手は硬いから払い除けたぼくの左手首がじんじん痛む
「な、なにするんだよ!?」
「突然失礼しました。でも私が求めているのは、君なのです。君自身を求めているのです」


ぼくとそいつは互いの目をじっと見つめ合う
「どういうこと?」
「私は君をただ見つめることすらもできず、君を利用し、君に生かされ、君に還っていきました。でも、君に殺されかけて今更になって気づきました。君の存在の大切さを。私が"ここ"にいることを」


そいつは手を差し出した
そうか。そういうことか
ぼくはそいつの手を取る
「これからどこに行くの?」
「まず、案内してくれませんか。君の緑と青の世界を。そうしたら次は、良かったら案内させてください。私の…」
「あなたのかったーい世界を案内してね!」


そいつは笑顔になって言う
「君の笑顔が見られてよかったです。緑と青の瞳が美しく輝いていますよ」
ぼくはそいつと手を繋いで吊り橋を渡った
これから始まるんだ
初めましてじゃない挨拶が