星野メトメの本棚

詩とか小説とか勉強研究とかをこの本棚に置いときます。存在を知ってくれただけでも本当に嬉しいです。

創作︰リストカット症候群

1995年、日本の地下深くにある研究所ではとある人体実験が秘密裏に行われていた。
研究主任はビットマルキスと呼ばれていた。


行われていた研究がどのようなものかというと、鬱病で死を望む人間に安らかな死を保証して協力してもらい、その人間に様々なストレスを与え、対する反応を観察するというものだった。


ーーー検体213ーーー
和泉 理子(19) 女


特性︰彼女は平均的知能を持ちながら、自分のことを親の期待に応えられない無能な人間と断定している。


与ストレス︰彼女より知能指数が20高い人間達に君は生きる価値があると励まさせた。


結果︰左腕をカミソリで傷つける行為が目立った。そして彼女はより一層死を願った。


考察︰自分より優れた他者との知性的人間的差異を理解することで自死のリスクが高まる。


ーーー検体214ーーー
渡辺 春木(25) 男


特性︰社会に対して恐怖心があり、引きこもりがちな自分に生きる価値はないと、家族にすら罪悪感を覚えて目を合わせられない。


与ストレス︰既婚の男性(研究員43)から、親不孝だ、親は悲しんでいる、早く働け、と説教した。


結果︰夜な夜な、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー)を110mgも過剰摂取し、右腕(彼の利き手は左手)をカッターで26箇所切りつけた。その後嘔吐した。そして彼はより一層死を願った。


考察︰罪悪感を増大させることで自死のリスクが高まる。


ーーー検体215ーーー
春崎 香菜(22) 女


特性︰先天的な鬱病。容姿端麗だが、幼少期から他人に好意を与えられると恐怖を示す傾向がある。また、自分が幸福だと感じると拒絶反応を示す。


与ストレス︰アイドルになりたいという彼女の夢を叶え、鬱病に理解のある理想の男性(研究員61)に愛を誓わせた。


結果︰左腕と左太腿の裏に乱雑な自傷の痕跡が発見された。また、顔の斑模様は自分で首を絞めたことにより毛細血管が切れたためだと推定。そして彼女はより一層死を願った。


ーーー総括ーーー


215人の被験者の死をもって、腕を中心に自分を傷つける行為を『リストカット症候群(別名︰ロジアンスメルデス)』と名付ける。


鬱状態の人間の自死を人為的に発生させることが証明されたため、以後対象を鬱状態にする薬物を利用した安楽死計画を秘密裏に進める。最終目標は敵国の人口削減と士気の低下である。


リストカット症候群(ロジアンスメルデス)は96%が人為的である。