星野メトメの本棚

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ベンゾジアゼピンの作用機序

ベンゾジアゼピン(以下、BZD)という名を聞いたことがある人は多いと思います。抗不安薬睡眠薬、抗てんかん薬など色々な用途があり、BZD活躍以前に使われていた同効果のバルビツール酸系の薬よりも安全性が高いということで、現在でも比較的処方されやすい向精神薬です。

 

BZD系の有名な薬といえば、デパスハルシオンワイパックス、リーゼ、レキソタン等々、精神科や心療内科に罹ったことがある人は多くの人が処方されたことあるのではないでしょうか。名前なら聞いたことある、という人もいると思います。

 

現代は抗うつ薬としてSSRISNRIが活躍していますが、これらの新薬が活躍する前から世界の精神医学を支え、新薬との作用機序の違いから併用が可能となっている今なお重宝される薬がベンゾジアゼピンです。

私もお世話になっています。

 

このBZD、飲んでいる人は多いですが、その作用機序について理解している人間はほとんどいないのではないのでしょうか。

今回はBZDの作用機序について、できるだけ細かくできるだけわかりやすく解説します。

 

 

BZDは、1955年にレオ・スターンバックというユダヤ人化学者がアメリカで偶然発見しました。

レオ・スターンバックはのちに全米発明家殿堂入りしています。

 

BZDの発明がどうしてそこまで凄いものなのか、それはバルビツール酸系と比較した時のその安全性の高さにあります。

 

BZDもバルビツール酸も、作用する神経伝達物質レセプターはGABA受容体です。

GABAというのは、別名γ-アミ酪酸、抑制アミノ酸神経伝達物質で、興奮アミノ酸であるグルタミン酸と対象的なアミノ酸です。(精神展開薬をまとめた記事にグルタミン酸が出てきますが、まさに興奮アミノ酸のことです。)

 

GABA受容体はGABA(A)受容体とGABA(B)受容体に分けられますが、BZDが作用するのはGABA(A)受容体の方です。

(ちなみにGABA(B)受容体は別名 Gタンパク質共役型受容体といい、MDMAやイボガインといった共感薬として使える薬物が作用する神経伝達物質レセプターです。)

 

BZDを摂取するとGABA(A)受容体ではどのような反応が起こるのでしょうか。

まずは GABA(A)受容体 を見てみましょう。

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( https://kusuri-jouhou.com/pharmacology/bz-bar.html より拝借させてもらいました。)

 

図から分かるように、GABA(A)受容体にはBZD結合部位、バルビツール酸系結合部位、GABA(γ-アミ酪酸)結合部位があります。

真ん中にある塩素イオンチャネルはクロライドチャネルとも言います。

BZD系薬がバルビツール酸系薬の代わりと言われるのは、同じ受容体に結合部位があるからなんですね。

 

BZDがGABA(A)受容体と結合すると、クロライドチャネルの開口頻度が増加し、塩素イオンが細胞内を逆流します。塩素イオンが逆流すると、過分極という反応で電気信号が伝わりにくくなり、抑制状態に入るのです。

これが抗不安作用、催眠作用、抗てんかん作用などを引き起こします。

 

ちなみに、バルビツール酸はどうなのかというと、基本的には一緒です。ただBZDと1つ異なる点があり、それはバルビツール酸の濃度が高まった時、BZDと違い、クロライドチャネルの開口回数の増加だけでなく、開口時間の延長まで引き起こしてしまうというところです。開口時間の延長は、抑制アミノ酸であるGABAの薬理作用の致命的なほどの効果増強を引き起こすところが危険視されています。実際、過剰摂取での自殺が相次ぎました。

 

ただ、自殺ができてしまうから危険視されているだけで、バルビツール酸系薬がBZDに劣っているという認識は間違いです。

当然ながら効果としてはバルビツール酸系のほうが強いため、症状が重度な患者には今でももちろん処方されています。

良薬は口に苦し、ですね。

 

以上、簡単にベンゾジアゼピンについて解説しました。

記事の更新か、次の記事かで、ベンゾジアゼピンと並んで名前を聞く「非ベンゾジアゼピン」についても解説したいと思います。