星野メトメの本棚

詩とか小説とか勉強研究とかをこの本棚に置いときます。存在を知ってくれただけでも本当に嬉しいです。

ビッグバン宇宙論にみる存在の儚さ

その名前だけは有名なビッグバン宇宙論では、高温高密で一様な状態から宇宙は始まり、そこから膨張し続け今の宇宙があるとされていて、これはさまざまな理論や、宇宙背景輻射の観測などから正しいとされている。

 

このビッグバン宇宙論について知れば知るほど、存在の矮小さに驚くことになる。

 

そもそも、物質には対称的な性質をもった反物質が存在していることが明らかにされているが、僕らの目には物質しか見えない。

電子の反物質である陽電子が観測されたことはあるが、そのほかの反物質については理論上でしか存在していない。

 

つまり、不思議なことに、僕らのいる世界は「物質が優勢の世界」という謎めいた空間になる。

 

この謎については、ロシアの「ソ連水爆の父」とされているサハロフを初めに、小林誠益川敏英といった日本人などの研究から一つの答えが与えられている。

 

それは「CPの破れ」といい、粒子と反粒子の質量や寿命は同じだが、その相互作用する様子、詳細については完全に同じとは言えないという答えだ。

このCPの破れの効果により、宇宙の超初期には量が同じだった物質と反物質の間にほんのわずかなズレが生じ(物質が10000000000あったとすると、反物質は99999999994あったというほどのわずかなズレ)、宇宙が膨張して冷える過程で対消滅した結果、残ったのが余り物の残りかすの物質で、この宇宙はまさにその残りかすでできているということだ。(詳細に知ろうとすると、レプトジェネシスなど色々と候補があるらしく、まだ解明されてはいない)

 

 

また、ビッグバン宇宙論では、現在の宇宙の構造は、一様なはずの初期宇宙で起こった10万分の1の密度揺らぎから生じたことが知られている。

ほんのわずかな密度の揺らぎでも、それが膨張していくにつれて密度が高いところは重力によりさらに密度が高くなり、それに従って密度が低いところはより低くなる。その密度の変化が銀河、星、生命とあらゆるものを創り出すきっかけになった(らしい。正直本を読んでもよくわからなかった)

 

ただ、このビッグバン宇宙論にも当然謎はあり、なぜ密度揺らぎが起きたのか、またなぜ宇宙は平坦なのか(平坦とは、三点を結んでできた三角形の内角の和が180°になる性質のこと。たとえば球面に三角形を作れば内角の和は180°ではなくなるように、内角の和が180°になるというのは平面という特別な場でしか起こらない現象)など

 

この平坦という性質は、実は我々の知る宇宙は球面のほんの一部を切り取ったとても小さな部分にすぎないため、内角の和が180°に見えてしまうだけ(地球は丸いのに地平線や水平線が真っ直ぐ横に伸びているように見えるのと同じ現象)という話もあるが、それはビッグバン以前の宇宙を予測する「インフレーション理論」という枠組みの中で話されており、宇宙の解明が進むにつれて、人生なんてどうでもよくなってくる現象が僕の中で加速する。

 

宇宙の解明はうつ病に効果あるのではないだろうか、そういう意味では幻覚剤に似ているところがなくもない。

 

参考  『マルチバース宇宙論』野村泰紀